1960年代に、凝固カスケードが報告されて以来、血液凝固への理解が劇的に広った。しかし、このカスケードを使用する上で重要なことは、凝固因子欠乏症の理解のためのカスケードであり、生体内での凝固反応を正確に示したものではないということである。例えば、第Ⅷ, Ⅸ因子が欠乏する血友病患者の出血傾向を内因系と外因系の共通passwayである第Ⅹ因子が代償することができないことや、上流に位置する第Ⅺ, Ⅻ因子が臨床的に重大な出血傾向をきたすことが稀であることからも、この凝固カスケードが生体内の反応を示したものではないと理解できる。
ちなみに、凝固因子にまつわるちょっとした知識には以下のような内容がある。
・凝固因子は第Ⅵ因子が欠番であるが、これは発見された第Ⅵ因子が後に第Ⅴ因子の活性型であることがわかったためである。
・大網には第Ⅲ因子(Tissue factor)が多く含まれており、十二指腸潰瘍穿孔などでGraham patchを行う理由としても知られている。(大網は別名 policeman of the abdomenとも言われる。)
・血液製剤にはカルシウムをキレートするクエン酸が含まれているが、これは第4因子(Ca)が存在することで、凝固反応が進んでしまうためである。
列挙し始めるとキリがないが、上記が主に凝固因子を学んで、興味深く学んだ点であった。
参考:日本血液製剤協会 http://www.ketsukyo.or.jp/glossary/ka05.html
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