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執筆者の写真TAKUTO Yoshida

Thromboelastogram(TEG) ⑨ TEGに関する論文紹介

③肝胆膵

心臓、肝臓手術でのTEGの使用

Dias JD, et al. J Thromb Haemost. 2019 Jun;17(6):984-994. PMID: 30947389.

・8つのelective surgeryを対象にしたRCTと1つのemergency surgeryのRCTに関するmeta-analysis

・輸血量、出血量、手術時間、ICU滞在日数がTEG使用で優位に減少する。

・Mortalityは変わらず。


脾摘と血栓症

Pommerening MJ, et al. Surgery. 2015 Sep;158(3):618-26. PMID: 26209572.

Study Design US、3施設, level 1 trauma center

P: 6時間以内に搬送された成人の外傷患者 (N=1242)

E: 脾摘群

C: 非脾摘群

O: TEイベント

脾摘群の方がより重症患者が多い。

脾摘群でより受傷後24時間を境に凝固亢進状態に。


脾摘群でTEイベントが多く、入院も長期化している。


結果自体は至極当たり前のように見えます。脾摘後の血小板数と血栓症の発症に関するエビデンスがなく、TEGを使って何か新しい知見を得ることはできないのでしょうか?


TEGによる膵癌の予後予測

Ji R, Ren Q, et al. Medicine (Baltimore). 2018 Jun;97(25):e10824. PMID: 29923974

低カルシウム血症や悪性腫瘍の合併症で見られる血栓症を名付けたArmand Trousseauは自身も晩年に胃癌を患いトルソー症候群を発症した。

→凝固亢進は予後不良因子か!?


・治療開始前のfibrinogen高値はHCCや膵癌の予後不良因子とする結果。


Schulick AC, et al. Ann Surg. 2020 Dec;272(6):e288-e289. PMID: 33055584.

Study Design 米国、単施設

P: 膵癌に対し根治切除を受けた患者(N=47)

E: Elevated angle(+)

C: Elevated angle(-)

O: OS, DFS

M: 後ろ向きコホート研究

Elevated Angleはフィブリン産生速度が早いことを表す。

・既報の結果をTEGでも裏付ける結果に。


HCCや膵癌における予後予測因子としてfibrinogenはあまり聞いたことがありませんでしたが、こういった研究も行われているようです。後者の論文はsample sizeが少なく、術前のワンポイントのみの測定なので、術前⇨術後、ケモ前⇨ケモ後のように測定値の変化を追っていくことや対象患者を変えていくことで色々なことがわかってきそうです。


④周術期抗血栓薬

抗血栓薬を休薬し忘れた時

本来休薬すべき薬を休薬し忘れる場面によく遭遇しますが、そういったシーンにもTEGが有効かもしれません。

Kasivisvanathan R, et al. Br J Surg. 2014 Oct;101(11):1383-90. PMID: 25088505.

Study Design① 

P: 7日以内にクロピドグレルを内服してしまった予定手術患者

E: TEG-PM ADP-PRI<30% (low risk of bleeding)

C: Matched control (surgeon, anesthetist, age, sex, surgical priority, type of surgery, operative complexity and approachでMatching)

O: 術中RBC輸血量


Study Design② 

P: 7日以内にクロピドグレルを内服してしまった緊急手術患者

E: TEG-PM ADP-PRI≧30% (high risk of bleeding)

C: Matched control (surgeon, anesthetist, age, sex, surgical priority, type of surgery, operative complexity and approachでMatching)

O: 術中RBC輸血量

・high risk群では術中輸血量が有意に多い。

2000回のbootstrap法で描いた平均のROC曲線


Cut-off値としてADP-PRI 34%

⇨術前にクロピドグレルの休薬ができなかった場合、TEG PMを施行しADP-PRI<34%であれば、予定通り手術が行える可能性あり。








⑤COVID-19

COVID-19患者における凝固亢進の早期発見

COVID-19と血栓症との関連は、初期の頃から報道されていたように思います。この領域にもTEGを用いた研究が行われていたので紹介します。

Mortus JR, et al. JAMA Netw Open. 2020 Jun 1;3(6):e2011192. PMID: 32501489.

Study Design アメリカ、単施設

P: 鼻腔スワブのPCR検査でCOVID-19陽性でICU入室した患者

E: TEイベント 0-1回の群

C: TEイベント 2回以上の群

O:各種凝固検査結果


このようにTEGの強みとして、PT, APTT, fibrinogenでは見れないTEGのα-anlgleやMAによって、より早期に凝固異常を検知できることかもしれないと思いました。

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