Role of Prophylactic Cholecystectomy After Endoscopic Sphincterotomy for Biliary Stone Disease
A Systematic Review and Meta-analysis
Annals of Surgery: April 2021 - Volume 273 - Issue 4 - p 667-675
Thomas R. McCarty et al.
Division of Gastroenterology, Hepatology and Endoscopy. Brigham and Women’s Hospital
Harvard Medical School
BG:総胆管結石症に対する内視鏡的乳頭筋切開術(EST)後の予防的胆嚢摘出術は胆道系合併症を減らすとの報告があるものの、ESTは予防的胆摘を回避する目的でも用いられ、有用性について一定の見解がない。
Ho: 総胆管結石に対するEST後の予防的胆嚢摘出は有効ではない
P: 総胆管結石に対するESTを受けた患者1605例(9文献から)
E: EST後の予防的胆摘症例(n=741)
C: EST後の保存加療症例(n=864)
O: 死亡率 (primary)、胆石疝痛や胆嚢炎の再発、膵炎、胆管炎、偶発的な胆摘(secondary)
M: Systematic review & Meta-analysis
Results:
・予防的胆摘と比較し保存群で
・mortalityが高く(OR=2.56, 95% CI 1.54-4.23, P<0.0001, I2=18.5)
・胆石疝痛や胆嚢炎の再発が多く(OR=5.10, 95% CI 3.39-7.67, P<0.0001, I2=0.00)
・膵炎(OR=3.11, 95% CI 0.99-9.83, P=0.053, I2=0.00)、胆管炎(OR=1.49, 95% CI 0.74-2.98, P=0.264, I2=0.00)の発症率に差はなし
・追加のERCPまたは経皮的胆嚢ドレナージの介入率に差はなし(OR=1.96, 95% CI 0.57-6.78, P=0.29, I2=53.5)
・結果的に保存群の26%で胆摘が必要であった
・前向き(6文献)とRCT(2文献)に絞った感度分析においても、予防的胆摘群でmortalityが低く(OR=1.92, 95% CI 1.16-3.20, P=0.012, I2=0.00)、直近5年間の2文献でも同様だった。
Conclusion: EST後の予防的胆摘は有効である
私見:
Annals2021年4月号より、総胆管結石EST後の胆摘をすべきか?というsystematic review & Meta-analysisです。
今回PRISMAに沿った評価を初めて行いました。文献中でもPRISMAに沿ったと記載がありおおよそ満たしていましたが、それぞれの結果に対する異質性の原因やバイアスの評価、COIなど細かな点がありませんでした。チェックリストを見ていると、そこまで必要なのかというくらい細かいですね。批判的吟味の重要性を再認識しました。
今回の論文は比較的シンプルで読みやすく、EST後は胆摘をすべきというあまり面白みのない結果、という印象ですが、患者に胆摘の必要性を説明する上で、予防的胆摘をしないと胆石症を患うリスクが5倍で死亡率は2.5倍、様子を見ても結果的に4人に1人は胆摘を要する、といった数字を把握する上で重要であり、Clinical relevanceは高いのではないかと思います。
胆石の位置や数、ESTの手技についての情報がない、follow upが4年と比較的短い、EST後手術までの期間が一定ではないなどのlimitationがあります。Meta-analysisといっても、結果を鵜呑みにしてはいけませんね。特にEST後予防的胆摘をいつやるかという検討は今後の課題ですが、discussion中ではERCP後24時間以内の胆摘が開腹移行率を下げたというsystematic reviewが紹介されています。日本では難しいかもしれませんが、胆摘くらいならESTと同じ入院で施行した方が患者にとってはありがたいのかなと思いました。