Surgery Improves Survival After Neoadjuvant Therapy for Borderline and Locally Advanced Pancreatic Cancer
A Single Institution Experience
Elena Rangelova, MD
Department of Clinical Science, Intervention, and Technology (CLIN- TEC), Karolinska Institute, Stockholm, Sweden
Ann Surg 2021;273:579–586
Objective:
切除可能境界(borderline resectable: BR)膵癌や局所進行(locally advanced: LA)膵癌のどのような症例で術前治療(Neoadjuvant treatment: NAT)が望ましいか、どのような症例で積極的な手術戦略が必要なのかが現在のところ不明である。
Background:
FOLFIRINOXによりLAPCの生存率が改善(24.2ヶ月)
強力な化学療法がある中LAPCにに対する手術の意義はあるのか?
生存率の改善に寄与しているのは、化学療法なのか?それとも化学療法+手術なのか?
形態学から判断するBRPC, LAPCの分類は、生物学的悪性度を測る確かな指標となっているか?
Research question(RQ)
・NATの適切なレジメンは何か?
・LAPC患者にはより積極的な外科的アプローチをとるべきか?
RQの構造化
Design 1
Ho: NATが施行されたBR-PC, LA-PCで予後に差はない。
P: 2010年-2017年の期間で、カロリンスカ大学病院にてBRPC or LAPCでNAT(chemotherapy + radiation therapy)を受けた患者
E: BR-PC
C: LA-PC
O: OS
M: Retrospective cohort, single center
Design 2
Ho: NATが施行されたBR-PC, LA-PCに置いて手術群と非手術群でOSに差はない。
P: study design 1 と一緒
E: 手術群
C: 非手術群
O: OS
M: Retrospective cohort, single center
Methods
〈Inclusion criteria〉
-2007−2017年、カロリンスカ大学病院
-BR/LA-PCでNATが施行された患者
-異なる郡の患者については、NATに関するデータが欠落している場合に除外した。
〈レジメン〉
〜2014:gemcitabine- or capecitabine-base 2015〜:FOLFIRINOX
〈手術適応〉2015~: NAT中に癌の進行を認めなかったもの。
〈Statistical analysis〉
・診断から死亡または5年までの経過期間。
・生存率分析;Kaplan-Meier法、ログランク検定、Cox比例ハザードモデル(年齢、性別、NATの種類、Ca 19-9を調整)。
・量的予測因子であるCa 19-9をモデル化するためのRestricted curve spline法を利用
Results:
・156名の患者(平均64歳、53%が男性)が解析対象。
・LAPCは132人(85%)、BRPCは22人(14%)、resectable PCは2人(1.3%)であった。
・50人(40.3%)の患者がfull doseのNATを受けた。
・54人(34.6%)にはFOLFIRINOXが投与された。
・切除された患者の全生存期間は、BRPCとLAPCでほぼ同じであった(生存期間中央値15.0カ月 vs 14.5カ月、P =0.4;および31.9カ月対21.8カ月、P 1⁄4 0.7、それぞれ)。
・手術群の患者は、非手術群の患者よりも生存率が高く、NATの種類や全量投与の有無にかかわらず、生存率が高かった(生存期間中央値:22.4カ月 vs12.7カ月、1年、3年、5年生存率:それぞれ86.4%、38.9%、26.9% vs 52.2%、1.5%、0%(P < 0001))。
・術前のすべてのCA 19-9の値において、外科的切除は生存率にプラスの影響を与えた。
Limitation
・Follow up期間が短い
・初期は緩和に、後期は手術に移行する症例が多かった
・切除マージンの評価がされていない
Author’s Conclusion:
BR-PC/LA-PCでかつNATの期間中、病勢の進行が見られなかった症例では、NATのレジメンや投与量によらず、手術を検討すべきである。Ca19-9高値だけでは手術の絶対的非適応とすべきではない。
Critical Appraisal
FINERに沿ってRQを評価
Feasibility(実現可能か)
Karolinska Universityと日本の施設の比較。
Karolinska Universityの臨床を日本に応用できるか?
Interesting/Novel(面白いか/新規制があるか)
FOLFILINOXが使用されるようになって以降での手術の有用性
Ethical(倫理的に許容されるか)
倫理的問題はなし。
Relevant(切実であるか)
メリット:OS延長
デメリット:手術によるQOL低下(術後合併症による長期入院、下痢・胆管炎)
Methodについて
Primary OutcomeのOSはTrue(臨床的に重要とされる6Dの一つ)かつHard(客観性が高い)
研究デザインは、予後に関する検討であり、Cohort研究はLevel3相当
対応のない(繰り返しのない)打ち切りのある二値変数→ログランク検定・Cox比例ハザードモデル
私見
Annals of Surgery 2021年3月号です。カロリンスカ大学は年間約300件の膵臓手術をするhighvolume centerで、本論文でもSample sizeが非常に大きいことがstrengthの一つと言えます。NATの反応性で生物学的悪性度を測り、例えUR膵癌であっても適応があれば手術を検討するという膵癌治療のトレンドに則した論文と言えます。
STROBEのcohort研究のReporting Guidelineを参照すると、Missing data, Flow diagram, External validityの項目の記載がありませんでした。治療する患者層の重症度などを探るにはFlow diagramがあるとよりわかりやすい可能性があります。
一般的にCa19-9高値は諸々の予後予測因子とするものが多いですが、本研究ではあまり予後との関連はなかったとしています。どのタイミングで測定されたか記載がありませんので、その臨床応用にが注意が必要です。またCA19-9がNATにより高値→正常となるような症例では、手術の意義があるかどうか?NAT前後でのCa19-9の推移を見ることで新たなRQが生まれそうです。
ミーティングで扱った内容も踏まえ作成し直しました。