Sho Sekiya
A Combination of Biochemical and Pathological Parameters Improves Prediction of Postresection Survival After Preoperative Chemotherapy in Pancreatic Cancer The PANAMA-score
Thomas Hank, MD
Department of Surgery, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, Boston, Massachusetts
Annals of Surgery, Volume 275, Number 2, February 2022Background:AJCCのstagingはNACのセッティングでのvalidationを欠くため、NACを施行したPDAC患者の予後スコアリングは確立したものがない。Objectives:NAC後の膵癌切除患者の臨床的、病理学的予後因子を同定し、それらを用いた予後予測モデル(pancreatic neoadjuvant Massachusetts-score; PANAMA-score)を提案するRQの構造化
P:training cohort:MGHで2007-2017年にNAC後膵切除を施行した216例
validation cohort:Heidelberg大学病院で2006-2017年にNAC後膵切除を施行した258例
O:OS (手術日から死亡まで)Methods:
本研究における予後予測ツールの開発はTRIPOD (Transparent Reporting of a Multivariable Prediction Model for Individual Prognosis Or Diagnosis guideline) 「個別の予後や診断に関する多変量予測モデルの透明性ある報告のためのガイドライン」に準じて行われています。これは予後指標を報告する上で守るべきルールとして2015年に発表されたものです。こちらで日本語版が紹介されていますので、ご参照ください。
https://www.tripod-statement.org/wp-content/uploads/2020/01/primarycarevol2no4TRIPOD.pdf統計解析:Cox比例ハザードモデル、Kaplan-Meier曲線、Harrel concordance index (C index)
※C indexはざっくり、ROC曲線のAUCに時間軸の情報を加味したもの、とのこと。Results:
・training cohortの85%はFOLFIRINOX、中央値で7コース、さらに地固め的にcape or 5FUと組み合わせたCRTを89%に施行
・術式は72%がPD、2割に血管合切
・OS中央値が32ヶ月、5生率は29.7%
・単変量解析で抽出された腫瘍径(0-3点)、転移LN個数(0-2)、R-status (0/2)、NAC後CA19-9 (0/1)よりPANAMA-scoreを作成(0-8点) (Table.3)
・点数ごと、またはlow/intermediate/high riskに分けて作成したKM曲線で良好に層別化され(P<0.001)、validationと合わせても同様の結果
・AJCCとの組み合わせと比較:AJCC分類でのstage 0/I vs II vs IIIに予後の有意差はあるものの、II vs IIIでOSに有意差なし(P=0.396)。一方PANAMA scoreはAJCC stage 0/I患者群においてlow vs intermediate riskで層別化可能であり、stage IIの中でもlow vs intermediate vs high riskで層別化ができた(Fig. 3)。2年生存率のAUCで評価すると、PANAMA scoreはAJCCより優れていた(0.659 vs 0.596)Discussions:
伝統的なTNM分類ではNAC後の癌の病勢を正しく把握できない。画像所見から腫瘍径を測定するのは困難で、肉眼的な腫瘍の中でも癌細胞は散在性に存在している。また、upfront resectionと同じ腫瘍径のcut offを用いるのは不自然であり、転移リンパ節個数についても同様である。予後において重要であるR statusや、NACの評価に重要なCA19-9の値・変化も予後予測ツールに加えられて然るべきである。Limitation:retrospective、NACのレジメンが統一されていない(にも関わらずvalidationされているのは良い点でもある)Conclusion:simpleな病理因子とCA19-9から算出されるPANAMA-scoreはNAC後の膵癌切除患者の予後予測に有用で、術後患者のリスクに応じたフォローアップに役立つ。私見:
<FINERに沿ったRQの評価>
F: 積極的に利用したい
N/I: NACという点では新しいが、着眼点や用いた因子に新規性は薄い
E: 問題なし
R: 補助療法の進歩と共に見直されていくべきテーマAnnals2月号より、MGHからの報告です。
Training cohortとvalidation cohortは切除可能分類による治療方針が若干異なっており、trainingではBR/URに対して基本的にFOLFIRINOX施行後(一部radiationを挟んで)手術をしていますが、validationではBRにはupfront resectionが施行され、UR-Mでも補助療法の反応とPSがよければconversion surgeryを行なっていたようです。
NAC後の手術を行う際に、腫瘍が不明瞭化することで、術前のT因子を決められずよく悩みます。NAC後のstagingにもリスクで層別化された新たな定義が必要かもしれませんね。
膵癌の予後予測スコアはよく出会うテーマではありますが、個人的に予後予測ツールの開発にTRIPODがglobal standardで用いられていることが勉強になりました。